『ヒマワリ』を録音中のスタジオでのこと。
急にのどを詰まらせて、丸石くんが歌うのをやめてしまったことがある。
どうしたんだろう?
ブースの中から出てきた丸石くんは、目を赤く充血させていた。
「すいません。涙が止まらなくなっちゃって…」
歌っている最中に感極まって、泣いてしまったのだそうだ。

「いい奴だなあ」
スタッフの間で丸石くんの評価は高まる一方だ。
ぼくの経験など大したものではないが、
これほど繊細な感受性を持ったアーティストは珍しい。
丸石くんとなら新しい音楽を作れそうな気がする

これまでのポピュラーミュージックの歴史を振り返ると、
そこには共通のメッセージが織り込まれているように見える。
姿、形はちがっても、何かを手に入れようとする意志が働いている。
「愛」「夢」「幸福」「成功」・・・
それらを手に入れた喜びや、失ってしまったときの悲しみが歌われてきた。

だけど時代は変わってしまった。
今ぼくたちは何かを手に入れるよりも、共に分かち合うことに喜びを感じはじめている。
東日本大震災の被災地に駆けつけたボランティアは、
「いても立ってもいられなかった」
「誰かの役に立ちたかった」と口々に語り、奉仕の中に満足を見出そうとしている。

丸石くんの声からは、温かさ、優しさ、謙虚さが伝わってくる。
それは現代を象徴するものであり、
ぼくは丸石くんの声に触発されて『ヒマワリ』という曲を書いた。
書かせてもらった、というのが本当のところかもしれない。

「恋愛」とか「友情」とか個と個のドラマもいいけれど、
時にはもっと大きな存在について考えてみたくなる。
それは等身大のゴスペルかもしれない。
物真似ではなく、宗教のしばりを受けず、
日本人ならではの感性に裏付けられたゴスペル。
個と個を超える存在を結びつける歌。

新しい作品を模索しながら、
二人三脚の旅ははじまったばかりだ。
どんなに強い風が吹いても、身をかがめながら歩いて行こう。
ぼくたちが踏みしめているのは、
とてつもなく肥沃な大地だと信じて。

プロデューサー 多田泰教 

[CD] 2012 / 02 / 22発売 1,200円 NIPPON CROWN CRCN-2469play
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