作曲家、音楽プロデューサー。「カリテプリ音楽工房」代表。 1958年大阪生まれ。2004年『悲しい涙は流さない』(あべさとえ)、2006年『Deep Blue』(国土交通省「熊野川オリジナルソング大賞」)、2007年『幻のキャバレー』(メイ)、『誓い』(庄野真代)、2012年『ヒマワリ』(丸石輝正)、2013年『NHK BOSAI体操』、2016年『おともだち2000年』(京都府)など。
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13日(土)午後1時から「本宮熊野館」で『熊野を語る』というトークショーが開催された。
出演者は日本画家の牛尾武さん、
高山寺住職の曽我部大剛さん、
熊野ツーリズムビューロー会長の多田稔子さん、
三氏の鼎談形式で薦められた。
時間にして約1時間。
スライドを多用しながら、
この企画が生まれたいきさつや、
絵にこめられた思いや、
田辺に息づく熊野、
熊野に息づく縄文について縦横無尽にトークを展開。
さすがの面々です。
印象的だったのは『河畔の町』という作品について交わされたやりとり。
曽我部住職はこの風景を次のように解説する。
「ここに描かれている川辺の家並みは、
一軒一軒みると外観や色も違い個性がある。
しかし、家並み全体で見ると、
さまざまな色の材料を重ねて作った和菓子の断面のように美しい」
牛尾武氏はこれを受けて、
「隣近所で相談して作ったわけではないのに、
絵にしてみると何ともいえないリズムがある。
机の上で引いた設計図には、
生命を育む要素がないことを教えてくれる風景」
と語った。
曽我部住職は密教の言葉を引用し、
次のようにトークショーをまとめた。
「この世は多様である」
「多様である一つひとつは平等である」
「一つひとつは清浄である」
「それらはすべて互いに影響し合い支え合っている」
これらを総称して『不可思議』という、と。
東京羽田と南紀白浜を行き来しながら、
最近奇妙なことに気づいた。
機内アナウンスのとき、
機長の名前がうまく聞き取れないのだ。
最初は気のせいだと思っていた。
それが何度も続くので、
念のために名前を確かめるようになった。
ああ、やはり。
機長は外国人なのだ。
それもビルとか、グレッグとかいう名前ではない。
ホセとか、カルロスとか、ロドリゲスみたいな名前なのだ。
これは喜ばしいことではないか。
ラテン音楽を愛する身としては。
かれらの身体能力の高さは、
同業者のぼくが保証する。
楽器をまるでおもちゃのように、
軽々と扱って見せるのがかれらだ。
ぼくらがサッカーコートを走る距離を、
かれらは卓球台の範囲で処理する。
モノがちがうのだ、モノが。
つい先日のこと。
台風14号が近づいてきたとき、
案の定条件付の飛行になった。
この日どうしてもはずせない約束があったぼくは、
内心祈るような気持ちで定期便に乗り込んだ。
このときの操縦士がやはりラテン系の強者だった。
かれらは機体を生き物のように泳がせ、
乱気流を抜け、
霧の間隙をついて、
見事に南紀白浜空港に着陸してくれた。
しかも2000m滑走路の半分を残して。
ダイレクトに駐機場に進入する機内で、
乗客は大いに盛り上がりましたね。
さながらライブ会場のノリ。
ショーマンシップもまた、
ラテン魂そのものでしたね。
京成線曳舟駅を降りると、
目の前に東京スカイツリーがそびえ立つ。
これがマジンガーZの姿に見える。
今にも動きそうではないか。
東京スカイツリーのお膝元、
押上から青砥にかけて、
京成電鉄の沿線には、
東京でも屈指の居酒屋の名店が並ぶ。
電車を乗り継いでも行く価値のあるエリアだ。
ここまで来ると、
東京の西側とは若干食文化が異なるようだ。
酎ハイはハイボールと呼ばれ、
透明ではなく琥珀色の液体になる。
もつ煮込みの具材は豚から牛に変わり、
味噌味ではなく砂糖醤油の味になる。
関西人の舌によくなじむ味だ。
これまでとんと縁のなかった地域だが、
居酒屋を極めようとすれば結局ここにたどり着く。
曳舟、八広、四つ木、立石。
これらの地名は酒神デュオニソスを守護する使徒の名であり、
ぼくたちは聖地を旅する巡礼者だ。
ハイボールを飲み、
もつ煮込みを食べ、
ほろ酔いで外に出るとそこにはマジンガーZの姿。
航空障害灯がゆらゆら揺れて、
星の軌跡のように見える。
『残響の熊野』は素描展を名乗っているものの、
出品されている作品には素描の軽さとはほど遠いものがある。
本画と見まがうほどだ。
たとえばこの『曳き揃え』を見ると、
ぼくは梅雨明けの大気を思い出す。
手ですくえそうなほど、
水蒸気をたっぷり含んだ空気。
風はそよとも動かない。
一年で一番暑い日。
田辺祭りの気温と湿度を思い出す。
画は写真よりもリアルだ。
写真は色彩とフォルムの面白さを細大漏らさず写し取ることできるが、
画の場合はそうはいかない。
どこかで嘘をつかねばならない。
見たものを見なかったことにして、
情報を切り捨てなければならない。
このとき表現が飛躍する。
描かぬこと。
そのことによって、
描かれたものがより鮮明に胸に迫ってくる。
ピアニシモからフォルテシモまで、
表現のレンジが広くなる。
隠し包丁を入れられた食材のように世界の表面が立ち上がる。
色彩とフォルムの立体感が増幅されるのだ。
この個展に行くことがあったら、
ぜひ会場で表題の作品を見てほしい。
そしてそこに描かれている群衆を見てほしい。
虚構が持つリアルの力に触れてほしい。
芸術家とは世界に穴を穿ち、
その奥にひそむ精霊をこの世に召喚する存在だということがよくわかる。